2019年11月号 Vol.34 雅子皇后陛下の輝き

本離れもしていますね。 前田 私は、伊藤若冲の絵画がとて も好きなもので、「生誕300年伊藤若 冲展」が東京都美術館で開催されま したが、その時に改めて、若冲の人 生について興味をもった事があるの ですが、確か家業が八百屋さん、いや、 青物問屋でしたね。 小林 そうですね。青物問屋の当主 で、どうも稼業には向いていなかっ たようで40歳で隠居したのです。 前田 野菜や果物の絵画も大変に味 のある画風だと思いますが、対照的 に野鳥などの精密なものを描かれて いますね。鶏の絵などは、特に荒々 しいですよね。 小林 同じような白や黒い鳥だけで なくて、色鮮やかな鶏を自宅の庭に 集めて写生したのだと思います。 前田 ユニークな方ですよね。北斎 とか歌麿とは、また少し違った不思 議なセンスとユーモアを感じます。 小林 私は、30歳の時に東京国立博 物館で若冲展を開いたのですが、そ の時は、じっと見つめるという意味 の凝視の画家と彼を表現したことが あるのですが、草木や鳥をじっと見 詰める、見詰め尽くす。そういう事 から絵を描くときに省略をしないで、 おっしゃったような遠近表現、空間 意識がなくなるのでしょうか。デザ イン的で西洋絵画と違った面白さを 感じて頂けたのではないでしょうか。 そして、パリでは大変な人気だった のですが、カタログを3人に1人は 買っていかれたとか。日本では、10 人に1人買っていけばいい方なので すが。 前田 海外の方にとりましては、肉 眼で見てももちろん素晴らしいと思 われるのですが、何かビジュアルで 残していたいという心理が大きいの だと思います。こういったエキスポ ジションがありますと東洋の作風の ものを扱っている美術館(Musée Guimet)ブティックでは、他美術館 で展示されたカタログでその展示が 終了しても販売されていたりします。 小林 本当に意外な反響に驚きまし た。宮内庁三の丸尚蔵館宮という皇 室関係は、もと天皇の御物というも のを大切に保存し、展示活動されて いますが、宮内庁ルールがありまして、 一度に30日以上は、展示してはいけ ないんです。国内でもそうですし、 海外でもアメリカ、今回のパリと30 日ルールで制限されたものですから、 短い展示期間でしたので申し訳ない といいますか、もう少しご覧頂きた かったです。 若冲の作品は丹念な観察を通じて 得られた現実の姿と、空想の世界を 絵画として具現化したもので、その 驚くべき緻密な描写と極彩色で描き 上げられた花鳥画は、芸術的にも、 技巧的にも、日本美術の最高水準を 示すものです。 本展は、「ジャポニズム2018」のメ インプロジェクトの一つとして、若 冲の作品の中でも、最も注目を浴び ている彼の代表作『釈迦三尊像』と 『動植綵絵』全33幅をまとめて、欧州 で初公開しました。 これまでに、海外で『動植綵絵』全 30幅が相国寺の『釈迦三尊像』3幅 と一堂に展示されたのは、2012年に 米国ワシントン・ナショナル・ギャラ リーで開催された展覧会のみです。 今回も、『動植綵絵』30幅を、相国寺 が所蔵する『釈迦三尊像』と共に本 来の一揃いの形で展示しました。 前田 今後、開催予定の展示物につ いてご紹介いただけますか。 小林 私立美術館として、収蔵品の 特別なテーマをもって企画展を続け ないと、なかなかメディアが扱って くれないんです。ただ受身の状態で は(だめなので)、5階建てのギャラ リーの中で一部だけ味付けした企画 展をこれまで15回続けてきました。 秋からは、「DOKI土器!土偶に青銅 器展」(10月5日〜2020年3月29日) と題して、ドキドキするような縄文 土器とかはにわとか中国の青銅器と かペルシャのやきものなど、古代の、 普段なかなかそういうテーマは地味 なものですけれども、この間、パリ でも縄文とか土偶の展示も好評だっ たみたいでして、当館にも土偶とい う昔の縄文時代の土人形がいくつも あるものですから、そういうものを 中心に古代までタイムトリップして みよう、そういうことを企画してお ります。 1・美術の保存・公開・継承 岡田美術館は、日本が生み育て、あるいは日本に伝えら れてきた日本とアジアの美術品を、蒐集し、保存し、研 究し、公開し、さらに次代に伝え遺すことを、使命とする。 2・「楽しい!」の共有 岡田美術館は、美術を通して、多くの人々に、楽しみと 喜び、そして日本とアジアの文化に誇りを持っていただ くことを、使命とする。 3・地域文化への寄与 岡田美術館は、箱根に根差した美術館として、地域と連 携し、地域文化の向上に資することを、使命とする。 4・世界への発信 岡田美術館は、国際的な観光地・箱根に建つ美術館とし て、日本とアジアの文化を世界に発信し、広く文化の創 造に貢献することを、使命とする。 その次が北斎の展覧会、北斎もか なり海外から買い戻したものが、あ るものですから、そんな事を企画し ております。 観光がてら来られる方も多いこと から、長期にわたってお迎え出来る ように、1回の特別展を約半年と、 長く続けています。 前田 美術愛好家にとりまして、こ んなにじっくりと優れたアジアの名 品を鑑賞できる美術館は、世界でも 数多くないでしょう。令和の時代、 岡田美術館の今後のイベント、展示 が注目されます。 岡田美術館の基本理念 (美術館の使命) 岡田美術館 伊藤若冲「孔雀鳳凰図のうち孔雀図」(部分)江戸時代中期 岡田美術館蔵 P●INT DE VUE JAPON P●INT DE VUE JAPON 60 61

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