2019年11月号 Vol.34 雅子皇后陛下の輝き

Grace Patricia Kelly グレース・ケリー公妃 20世紀最大のシンデレラ・ストー リーとして名高いのが、グレース・ ケリーとモナコ大公レーニエ3世の 結婚でした。1956年4月19日にモナ コ大聖堂で執り行われたウエディン グは、ハリウッド女優として人気絶 頂だったグレース・ケリーに、世界 中が注目した正に一大イベントでし た。600人のゲストと推定3億人も の世界中の視聴者が、神秘的で可憐、 妖精のような美しさに溜息をついた ものです。二人はカンヌ国際映画祭 で出会い、恋に落ちました。27歳の グレース・ケリーは女優として人気 絶頂期でしたが、1956年にモナコ王 室に嫁ぎ「現代のシンデレラ・スト ーリー」と言われ世の中を驚かせま した。 世紀の結婚式は2回に分けて行わ れました。近親者のみを集めた4月 18日の民事婚では、グレースはピン クのタフタドレスに白い手袋を着用 しています。約600人が見守った翌 日のモナコ大聖堂での儀式では、美 しいレース仕立てのドレスに包まれ て永遠の愛を誓います。この美しい ドレスを制作したのが、アメリカの MGMスタジオのコスチュームデザ イナー、ヘレン・ローズ(グレースが 出演した映画『白鳥』、『上流社会』で 衣裳デザインを担当)によるもので した。ヘアメイクもMGMが担当。 映画の一場面のような美しい花嫁の 姿ができあがりました。ドレスは、 総レースで製作され、10分袖の長袖 に首回りも詰まったハイネックで、 露出控えめの聖女風をイメージして います。総レースが、気品溢れる、輝 くような美しさを演出しています。 裁縫師達は縫い目が見えないように、 アンティークのベルギーレースを身 頃に再刺繍し、さらに小さなパール を何百と縫いつけ、パーツはひとつ ひとつ組み合わせて制作されました。 レースの身頃部分にはキャミソール がついています。トランスパロン的 なシースルー感が美しく、スカート 部分にもインナーが付けられていま した。その上にフリル付きのペチコ ート、更にシルクファイユのプリー ツスカート、最後にトレーンを着用 しています。ウエスト部分にはシル クファイユで作られたカマー・バン ドをつけていました。スカートは、 アイボリーのシルクファイユを使用 していて、(400ヤード約366メート ル以上生地)を使用したほか、100ヤ ード(約91メートル)のシルクレース も使われ、ロイヤルウエディングの 贅沢感を引き出しています。ティア ラの代わりにグレース王妃がまとっ たのは、ジュリエットキャップでした。 たくさんのケシ・パール、レースが 施され、オレンジの花をモチーフに した、紙で作られた花輪もあしらわ れていました。そして、円形のベー ルを特別にデザイン。ベールの端に 小さな二羽のラブ・バードのアップ リケが縫いつけられています。ハイ ヒールは、レーニエ大公とほとんど 背の高さが変わらなかったこともあ り、2.5インチ(約6センチ)のパンプ スを着用。デイビッド・エヴィンズ のデザインによるもので、小さなパ ールとレースが縫いつけられていま す。また、左側のシューズにはデイ ビッド自身の、右側には妃の名前が 型押しされていて、さらには幸運を 呼ぶとされている1ペニー銅貨も忍 ばせていました。 20世紀中頃の敬虔な花嫁は、ブー ケの代わりに聖書を持つことが多く、 「MGM」はドレスだけでなく聖書に も、シルクやレース、パールを施し ました。当日、妃は美しく飾られた 祈祷書とスズランの小さな花束を手 にしています。現在、ウエディング ドレスは、アメリカ・ペンシルべニ ア州の「フィラデルフィア美術館」 に所蔵されています。 P●INT DE VUE JAPON P●INT DE VUE JAPON 32 33

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