2022年9月号 Vol.64 エリザベス女王追悼号

1947 1947 1947年、ロンドンにあるウエスト ミンスター寺院で結婚式を挙げたエ リザベス女王&フィリップ殿下。繊 細なレースが美しいウエディング・ ドレスは、ロンドン出身のデザイナー、 ノーマン・ハートネルによって手掛 けられました。 エリザベス王女とフィリップ王子が 結婚した時代、イギリスでは第二次 世界大戦後の緊縮政策がとられてい ました。 戦後2年が経っていましたが、イ ギリスはまだ戦禍から立ち直ってお らず、国民の生活は大変厳しいもの でした。ロイヤル・ファミリーも王 女のウエディング・ドレスを買うた めに衣服の配給券を貯めるといった 状況でした。お祝いのために王女に 許可された追加の配給券は200枚で す。しかし、それでは足りないと思 った王室ファンの国民の中には、配 給券を手紙で送る人もいました。も っとも、配給券の権利は譲渡できな いため、それぞれに手紙を添えて送 り返されたそうです。 配給券でウエディング・ドレスは 完成し、素晴らしいアイボリーのシ ルクに10,000個の小粒パールが縫い 付けられました。デザイナーを務め たノーマン・ハートネルは「自分が それまでに作った中で最も美しいド レス」を作りたかったと述べていま す。 そして、彼の願いは見事に実現し ました。布地は中国から輸入したシ ルクを使用しましたが、これは戦争 の影響もあり、あえて日本、イタリ ア製の物を使わなかったのです。4 mほどのトレーンにクリスタルやパ ールで「ジャスミン、クサナギカズラ、 パラゴムノキ、バラのような花」の 模様を縫いつけました。15世紀後半 に描かれたボッティチェリの「春(プ リマヴェーラ)」にインスパイアさ れたデザインです。イギリス王室の コレクションを管理するロイヤル・ コレクション・トラストによれば、 このドレスは戦後のイギリスにおい て「再生と成長」を象徴していたと 語っています。靴は、エドワード・レ イン氏による装飾つきのサテンのハ イヒールでした。式に向かう途中で ティアラが壊れ、お抱えジュエラー が飛んで来て直してくれた、という Elizabeth II エリザベス女王 エピソードは有名な話です。この繊 細で優美なドレスは、350人の女性 が合計7週間かけて縫い上げました。 「あの精巧なトレーンのついたドレ スが、どれくらい美しかったかは忘 れていました。 王女がどれだけ小さかったかも」 と当時ドレスの製作に関わり、2007 年に再びバッキンガム宮殿で展示さ れたドレスを見た、ベティ・フォス ターさんは『テレグラフ』紙に語っ ています。また、当時の思い出を「結 婚式のお祝いからの帰り道、電車で 誰もがあのドレスについて話してい て、自分が関わったことをとても誇 らしく思ったのを覚えています」と 貴重な体験を語られました。2017年 にエリザベス女王とフィリップ殿下 はご成婚70周年のプラチナ婚を迎え られました。三人のご子息と一人の ご息女の母親でもありながら、歴代 国王の在位最長記録と長寿記録を更 新中の正にスーパーウーマンです。 父王ジョージ6世の亡き後、エリザ ベス女王は1952年に即位。それから お二人は長年にわたってイギリス国 民と共に歩み続けています。 54 55

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