2022年9月号 Vol.64 エリザベス女王追悼号

在位70周年エリザベス女王の人生 イギリス国家の根の深い問題となっています。 余談になりますが、この3月、突然勃発し た、プーチン大統領の、ウクライナ侵攻も、 元を正せば、独ソ戦争以来、第一次大戦、 第ニ次大戦と、敗北に敗北を重ね、奪われ た領土ウクライナの取返し戦争であり、血 で血を洗う、消えることのない、深い民族の 怨念、正に、イギリスが抱える国の成り立ち に関わる民族闘争と同じであります。イギリ ス国家が歴史的には、元々他民族を侵略し 王国を建国したのですから、その建国の歴 史では、ケルト人のスコットランド人がイギ リス国の王となり、最後のアン王女時代迄、 100年近く続くスチュアート王朝(ジェーム ズ初代君主)が、イギリス王を兼ね君臨する ことになります。 このあまり例のない不思議な王位の継 承は、当時エリザベス1世が結婚後、後継 者を国民から強く要請されますと、エリザベ ス1世は、「君主たる者、王たるべき資質と 見識を供えし者が継がれたるべし」と敢然 と王の継承者は、実子に拘ることはないと 言い放なち、エリザベス1世の後に、スコッ トランド王ジェームズ6世がイギリス王を兼 ねる特異なイギリス王室が誕生します。さ らにスコットランド系列の血統が途絶えると、 オランダ総督、オラニエ公爵ウィレム王をい とも簡単に王に迎え、その後のDNAの継 承が断たれると、ドイツ国から、ドイツ人ハノ ヴァーから王を迎えます。この王位継承に 対する柔軟な考えと言うか、一見フリーハン ドに見える、王位継承に関する深い洞察と 時代認識に、イギリス王室の世が、永らえ た智慧と秘密があるのです。 兎にも角にも、王室の存続を最優先とし、 そのためにはDNAや性別なんかなんのそ の!と言う、このダイナミックな立憲君主制を どうしても守る抜くと言う強い意志は、何か あると、DNAの連続だ!とか、憲法改悪だ! とか傍目にも恥ずかしい、金科玉条、専ら 皇室典範を盾に、騒ぎ立てる、何処かのお 国柄とは、隔世の感があります。 このようにイギリス王室は、時代をすり抜 け歴史の試練を経て、今日のイギリス国家 連合王国が建国され、繁栄を見ることにな ります。然しその繁栄も永くは続きません。 第1次第2次世界大戦、さらに過激な民族 間の民族紛争による独立運動の嵐の前に、 大英帝国の存在も大きく変貌し、往年の絶 対的な連合王国としての、中心的な影響力 や求心力は見る影もなくなります。 1997年イギリス連合王国は、スコトラン ドとウェールズに対しその独立自治権を、国 民投票で承認することになり、外交行政と 安全保障の国防以外の内政は、承認され た議会で運営されることになります。歴史 の要請とは申せ、大英帝国の繁栄は時代と 共に終焉を迎えたかに思われました。 世界のロイヤルファミリー、どの王国も、 王国たる所以は、王位継承の連続性に求 められます、イギリス王室1000年余の歴史 にあって、現在のエリザベス2世、今年で満 95歳になり、1926年即位より、ウイリアム2 世(1027年即位1087年退位)から、数え て43代になり、然もイギリス王室6人目の 95歳の女帝の君臨となります。そんなイギ リス王室の最大の悩みは、この綿々と継続 してきた、栄光あるイギリス王室の継承の 問題と、肝心の、当の王位継承第1位のチ ャールズ王子のカミラ夫人との不倫スキャン ダルで、バッキンガムは国民の心と離れ、重 い気運が立ちこめていました。 そんな時、1981年、当時21歳の若さで、 イギリス国民をその初々しさや、イギリス国 民が秘かに待ち望んだ、純血のイングラン ドの出自の貴族の娘ダイアナ嬢とチャール ズ王子との婚約発表が飛び込みます。イギ リス国民の喜びようと言ったら、高揚と興奮 に包まれ、イギリス中が感激と興奮一色で、 連日テルビの、ダイアナとチャールズ、お2 人の、報道特番に朝から晩まで、齧 かじ りつい ている始末、そのテンションの上がりようは 日増しに激しくなるばかりでありました…。 しかしこの後、イギリス王室は3人のお孫 さんにも恵まれますが、結果的にはスキャン ダルと交通事故死と続きます。 数ある世界のロイヤルファミリーの中でも、 21世紀の今日、イギリスの王室が世界のロ イヤルファミリーの中心であることは、誰も が認めるところでありましょう。今世紀のと りわけヨーロッパのロイヤルファミリーが、時 代と共に衰退し消失していく中、有為転変、 波乱万丈の激動の歴史の中で、その王政 を永きにわたり、維持し存続させる事は容 易ならざる事であります。 イギリス王室が今日あるのは、当時の絶 対的な君主制から、13世紀のジョン王のマ グナ•カルタを創り、民意を巧みに取り入れ、 立憲君主制を育ててきた、並々ならぬ歴代 のイギリス王室の英知によるところが大きい と言えます。イギリス王室史の中でヘンリー 1世から、ヴィクトリア女王に至る何代にも、 名君が登場し国民の支持と敬愛を得たこと も王室が国民から離れなかった、その時代 の空気を巧みに読める王室だったからあり ましょう。 イギリス王室の歴史を紐解くと、多くの謎 や不思議な歴史的事件に遭遇します。 イギリス王室は、イギリス一国ではなく、 グレートブリテン、北アイルランド連合王国 が正式な呼称であり、イングランド、ウェー ルズ、スコットランド、更にアイルランドの一部、 北アイルランドの4ヶ国で構成されていて、 連合王国国家が、イギリス王室になります。 歴史的には、紀元5世紀に、ブリテン島にヨ ーロッパ大陸から先住するケルト人を、侵 略略奪しゲルマン系アングロ・サクソン人 が建国した国になります。未だにイギリス 連合王国で、燻り続ける民族運動は、時々 ニュースになりますが、この国家の成り立ち にまで遡り、深い民族的な怨おんしゅう 讐に辿り着く 事になり、そのしこりは年々過激になり、 Elizabeth II 華麗なる人生物語! Special Issue 10 11

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