2017年5月号 Vol.22 Diana 永遠のダイアナ

王宮はダイアナが考えていたような温かい場 所ではなかった。それどころか墓のように冷た く、孤独なところだったのだ。そのケンジント ン宮で、ダイアナはヘンリー王子を身籠ってい るにも関わらず、死を決意し、階段の最上段か ら身を投げた。奇跡的なことに、彼女もお腹の 中のヘンリー王子も、まったくの無傷であった。 報せを受けた女王陛下が寝室に駆けつけられた。 そしてこのときはっきりと、ダイアナがつらい 思いをしていることを理解された。ダイアナは 号泣していた。「私は、罠にはめられているので す……。もう、死にたいのです……。」 まるで映画の一場面のようだった、あのチャ ールズとの結婚式からまだ3年しかたっていな かった。たったの3年である。かつて夢中にな っていた、父の再婚相手でもある、ロマンス小 説作家バーバラ・カートランドが描くあのバラ 色の世界は、やはり嘘だったのか、とこの時、 理解した。まだ23才だというのに、ダイアナの 心はもう完全に荒んでいた。13歳年上のチャー ルズ。古典を愛する知識人にして、この未来の 国王は、どうしてこれほど好みの違う自分に恋 することができたのか。チャールズが魅力的で 完璧な王子様と言うのも、幻想にすぎなかった。 ダイアナは自分に自信があり、チャールズに幻 滅していたのだ。 実際ダイアナとチャールズには、共通するも のがほとんどなかった。彼女は友人にこんな話 をしている。「皇太子が結婚を申し込んでくだ さったとき、私には夢のようだったわ。これで 本当の愛を知ることができる、と思ったの。皇 太子と一緒なら、人生は素晴らしいものになる、 と確信していたし、私は自分の結婚相手のこと なら何でも知っていると思っていたの。でも実 際は何も知らなかった」。 ダイアナが階段から飛び降りた際も、病室を 見舞ったチャールズは、迷惑そうにするだけで、 この事件をきっかけに、夫婦のあいだにはもう 埋めがたい溝ができていた。お互いを赤の他人 のように遠ざけ、まるでシェークスピアの劇中 に登場する夫婦のようだった。チャールズはカ ミラ・パーカー・ボウルズに夢中で、カミラの ことしかもう愛していなかった。そして結局 2005年に二人は結婚するのだが。 P●INT DE VUE JAPON 63 Diana 永遠のダイアナ P●INT DE VUE JAPON 62

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